くるりと振り返った彼は、あたしに気づきしばらく驚いていたようだけど。
そのあと仲間に「先に帰ってて」そんな風に言ったのか、他の部員はその場を去り、あたしと蒼くんだけになった。
また、この場は一気に静まりかえる。
昇降口独特のひんやりした空気が、あたしたちの間を通り抜ける。
「蒼くんっ、話があるのっ……」
わっ、と気持ちが溢れてしまいそうになる。
泣きそうになるのを、歯をグッと噛みしめて堪えた。
「……うん、俺もある。ここじゃ暗いから」
蒼くんはそう言うと、近くの教室にあたしを促した。
パチ、と電気がつけられ、蒼くんの顔が鮮明に映る。
どことなく元気がなさそうに見えたのは、気のせいじゃないかもしれない。
それも、きっとこの間のあたしの態度が原因なんだ。
口火を切ったのは、蒼くんだった。



