「美紗?どこ行くの?」
「学校行ってくる!」
「今から!?何しに!?」
「すぐ戻ってくるから!」
お母さんに返事するのも惜しいくらいだった。
家を飛び出し駅まで走り、ちょうどホームに入ってきた電車に滑り込んで。
青々とした葉だけになった桜並木を走った。
「はあっ……はあっ……」
乱れた呼吸で見上げた校舎は、もう茜色に染まっていた。
グラウンドで活動する生徒はもう誰もおらず、体育館も静まりかえっている。
昇降口に入ると、帰り支度を終えた野球部員たちが流れてきた。
あっという間に賑やかになるけどそれも一瞬で、去った後はまた静まりかえる。
誰もない薄暗い昇降口はなんだか不気味だった。
でも、このあときっとバスケ部も来るはず。
そう思って上履きに履き替えて蒼くんが来るのを待っていると、思った通りバスケ部の集団がやってきた。
蒼くんの姿を見つけると、
「蒼くんっ!」
その背中に呼びかけた。



