「一昨日ね、蒼くんが来たの」
「えっ、なんで!?」
ガバッとベッドから飛び起きて……しまったと思う。
蒼くんが来るのは、珍しいことじゃない。
お兄ちゃんにお線香をあげに来てくれるとか、そんな風に今までも足を運んでくれていたから。
なのに、あたし必要以上に動揺しちゃって。
……自爆だ。
「……蒼くんね……美紗の傘をもって来てくれたの」
「あたしの……?」
そうだ。
あのときあたし、傘を放り投げて。
……それを、蒼くんが拾って持ってきてくれたってこと?
「上がっていくように言ったんだけど、遥輝のとこにもいかずに帰っちゃったの」
うちに来て、お線香もあげずに帰るなんて今まで一度もなかった。
お姉ちゃんも、蒼くんがいつもと違うことに気づいたはず。
「なにかあったの?蒼くんと」
……蒼くん、お姉ちゃんになにも話さなかったんだ。