どのくらい、久我くんの胸に顔をうずめていたんだろう。
なんとか気持ちを落ち着け、体を離す。
「ごめんね……。久我くん濡れちゃった」
あたしに傘を傾けてくれていたせいで、久我くんの背中はびしょぬれだった。
「構わねえよ」
サラサラな髪からも、雨が滴り落ちている。
「とりあえず今日は送るから」
「……大丈夫だよ……」
「どこが大丈夫なんだよ。そんな顔して」
「……」
「今の美紗、ひとりで帰せない」
真剣な表情でそう言った久我くんは、傘を持っていないあたしと一緒に電車に乗り。
本当に家の前まで送ってくれた。
「すぐにシャワー浴びろよ。風邪ひくから」
「……うん、ありがとう。久我くんも風邪ひかないように……」
「俺は大丈夫だから」
どこまでもあたしを心配してくれた久我くんの姿を見送って。
あたしは家へ入った。