「お兄ちゃんは……もう……いないしっ……それは自由だけど……」
唇をかむ。
「お兄ちゃんが、かわいそうっ……」
まだ涙が零れ落ちる。
『遥輝が近くに感じるんだ』
そんなふうに、蒼くんは言ってくれてたよね?
なのに、お兄ちゃんの初恋の人とつきあうなんて。
どうしてそんなことができるの?
遺されたふたりは、お互いに支え合ってお兄ちゃんの死を乗り越えたのかもしれない。
だけど、つき合うなんて。
あたしは……納得できないよ……。
「うっ……」
再び背中を震わせたあたしを、久我くんがもう一度ぎゅっと抱きしめてくれた。