君が泣いたら、俺が守ってあげるから。



「ひっ……ううっ……」



激しく号泣したあたしは、次第に勢いをなくし久我くんの胸に頭をつけながら短く呼吸を繰り返す。


それに合わせるように、背中を軽く叩いてくれた久我くんは。



「これ、掛けて」



スポーツバッグから取り出し大きなタオルを、あたしにかけてくれた。


冷えきった背中の雨風が遮断される。



「つまり……蒼先輩の彼女が……美紗のお兄さんの……好きだった人なのか?」



あたしは、久我くんに伝わるように頭を下ろした。



「彼女の方も……その……」



言いにくそうに、言いよどんだ後。



「お兄さんを好きだったのか?」


「…………うん」



お兄ちゃんを看取ったあの病室。


あの時、確かにお兄ちゃんと陽菜ちゃんは、お互いを想っていたはずなのに。


どうして今、蒼くんとつき合っているのか理解できない。


そんなに人の心って簡単に移るもの?