あたしは咄嗟に下敷きを手にとり、久我くんへ向けて扇いだ。
湿気の影響はないのか、あたしが扇ぐたび、サラサラの髪がふわっと踊る。
「あー、涼しい。美紗サンキュー」
爽やかな笑顔を向けられてドキッとした。
"男の子が名前呼びするのは、特別に思ってるから"
伊織ちゃんの言葉を思い出して、体中が熱くなってくる。
もしも……もしも、ハンカチの男の子が久我くんだったら……。
あの時に記憶を巻き戻すけど、どう頑張っても顔までは思い出せない。
涙のせいで、視界はかなりぼやけていた。
逆に、ハンカチの男の子はあたしのことを覚えてるのかな。
それが、久我くんならなおさら。
でも何も言ってこないってことは、ちがうのかな。
聞いてみたいけど……。
やっぱり怖くて聞くことはできなかった。



