五十嵐さんはあたしに向かってもう一度言った。
「私たちは、生きてるんだもん」
まるでそれは、お兄ちゃんの想いも含まれているようで。
生きたくても生きられなかった。
恋をしたくでもできなかったお兄ちゃんの。
「だから、自分のことを好きになってくれる人がいないとか、二度と恋したくないとかそんな悲しいこと言わないで」
「五十嵐さん……」
「亡くなった彼は、最後まで私の幸せを望んでいてくれたの。だから、私も今の彼と幸せになろうって決めた。今は、人生で最高の出会いができたなって思ってる」
笑顔だけど、うっすら目に涙を浮かべた五十嵐さんは、亡くなった彼を想っていたのかもしれない。
胸が……熱くなる。
「患者さんの家族にこんな話したの初めて。でも、美紗ちゃんは妹みたいに可愛いから特別!お母さんたちには内緒だよ」
そう言っていたずらっぽい目で笑う五十嵐さんは、やっぱり少女みたいに可愛かった。
「五十嵐さん……ありがとうございます。あたし、がんばります。次の恋……できるように……」
お兄ちゃんのためにも。
そして、あたし自身のためにも。



