信じられなかった。
いつも明るく笑顔の絶えない五十嵐さんに、そんな過去があったこと。
「私も看護師になって忙しい毎日を送っていて、しばらくはずっと心の中の彼とだけ話していた気がする。そんな時、声を掛けてくれたのが、今の彼だったの」
前を向いて遠い目をするその口元をじっと見つめた。
「彼は、亡くなった彼のこともすべて受け入れてくれて。心の中に彼がいる私でもいいと言ってくれたの。
彼はすごく優しくて、言葉や行動に何度も心が揺さぶられた。
やっぱりひとりで生きていくのはつらくて、そばにある暖かい手をつかめたらって思った。そう思えば思うほどそんな自分がすごく嫌になった。……でもね」
五十嵐さんは、あたしを見て優しく微笑む。
「それが、生きてるってことなんだと思った」
「……」
あたしのちっぽけな失恋話のために、大切な過去の話をきかせてくれた五十嵐さんに申し訳なさと、感謝と。
いろんな思いがごちゃ混ぜになって、うまく言葉が出てこない。



