久我くんは、あたしの手をひいたまま屋上の真ん中まで連れていく。
「ここなら、誰も見てないから」
広い屋上でふたりきり向かい合う。
「泣きたいなら我慢すんなよ」
涙で濡れた目で久我くんを見上げれば。
彼の瞳は、あたしを優しく見下ろしていた。
「俺の前では、本当のお前を見せていいよ」
……久我くん。
あたしが泣けるように、誰もいないところに連れて来てくれたんだ。
こんなときに、こんな風に優しくされたら……制御なんてきかなくて。
「……っ……ううっ……うわあああっ……」
我慢していたものを吐き出すように、声を上げて泣いた。



