「桜園に入ったのは、お兄ちゃんが行きたい高校だったからなんだ」
「……そうだったんだ」
「お兄ちゃん、ずっと入院しっぱなしで受験もできなかったらせめてあたしが……って」
「……」
「でも、レベル高いから大変だった」
そういって笑うと、久我くんも同調するようにふっと笑った。
「……あたしね、このこと話したの久我くんが初めてなの」
「え、田中にも言ってねえの?」
「うん……。伊織ちゃんには言おうとおもってるんだけど、きっかけがなくて」
今は、広瀬さんたちに感謝の思いすら湧き上がる。
あのときは焦ったけど、結果的に打ち明けるきっかけをくれたんだから。
「言った方が……いいよね?」
少し迷いながら久我くんに目を向ける。
身長差があるせいか、座っていてもあたしは久我くんを見上げるような形になる。
すると、彼は一瞬驚いたように目を見開いた。
……なにか?
「えっ、あ。ああ……田中に?」
慌てて顔を正す久我くんだったけど、その顔は少し赤らんでいるように見えた。
暑いのかな?
不思議に思ったけど、そのままうなずいた。



