「伊織ちゃんは、好きな人いないの?」 そういえば、まだ恋バナってしたことないや。 だからって、あたしたちの仲が薄っぺらいわけじゃない。 逆にそんな会話をしなくても、心地よく居られる友達って魅力的だと思う。 伊織ちゃんは人のことを詮索するタイプじゃないし、すごく付き合いやすいんだ。 「うーん、まだそういうのよく分からないの」 「そっかあ……」 恋愛体質そうに見えてそうでもない、伊織ちゃんの新たな一面を発見したとき。 ───トクン。 あるものを目にして、あたしの胸が微かに反応した。