「……ありがとう」
口をつけると、冷たい水が喉元をとおり体の中へ入っていくのがわかる。
一息ついて、落ち着いたように思えたけど。
ペットボトルを持つ手が震えていた。
透明な容器の中で、水が小さく波打っている。
街の、ど真ん中。
人々の話声、車の音、お店から流れるBGM……。
そんな喧騒のなか、この空間だけ切り取られたみたいに、何も耳に入ってこない。
隣に座っている久我くんの沈黙が、余計に緊張をあおる。
あたしが口を開かなかったら、この沈黙は永遠に続くような気がした。
きっと、久我くんはあたしが話すのを待ってくれているんだと思う。
彼は、そういう人だから……。



