すると、田辺さんはすぐに何かに気づいたように「あっ」と小さく声をあげ、口に手をやり。
「ご、ごめんね……お兄さん亡くなって、まだ半年だもんね……」
「そうだよっ!」
広瀬さんが田辺さんの袖を引っ張り、彼女は申し訳なさそうな顔で頭を下げた。
「だ、大丈夫……」
不意打ちで思い出されたお兄ちゃんの顔。
言葉とは裏腹に、心臓がドクンと音を立てた。
やだ。
こんなところでこんなやり取り……。
気持ちは、一気にあの当時にタイムスリップする。
お兄ちゃんの死を哀れまれながら過ごした、中学生時代に。
「あ……そうだ。野球部だった加藤くんって覚えてる?」
早くここから去りたいと思っているあたしを解放してくれず、広瀬さんはそう切り出した。



