「あの先輩、伊織ちゃんのこと好きなんじゃないの?」
まだ感じる女の子の視線におどおどしながら、あたしは伊織ちゃんの耳元でささやいた。
「えっと……先輩がまだ中学生の時にね、一回告白されたことはあるんだけど……」
伊織ちゃんは、アリーナを見下ろしながら少し頬を染める。
「ええっ、そうなんだ!」
伊織ちゃんのモテるレベルは、想像をはるかに超えているかもしれない。
だって今の先輩、ファンクラブがありそうなくらいの人気っぷりだったし。
まだ女の子たちの視線が痛いもん。
だけど伊織ちゃんはまったく気にする様子がなくて、そんな堂々とした姿をカッコいいと思った。
……あの先輩、まだ伊織ちゃんを好きなんだろうなぁ。
じゃなきゃ、練習を見て欲しいなんて誘わないよね。
あの笑顔からは、好きが溢れ出ていたように感じるし。



