理由を言ったら、お兄ちゃんが亡くなったところまで遡らないといけないし、そこは濁した。
いつかは話したいと思うけど、もう少し、時間が欲しいの。
「あんまり聞かないよね、学ランって。あたしの知ってる中学はブレザーばっかりだし」
首をかしげる伊織ちゃんにも心当たりはなさそう。
「そっか」
やっぱり難しいよね。
無理かなぁ……と肩を落とすと。
「もしかして絢斗ならわかるかも!バスケの試合でいろんな中学に遠征に行ってたから。聞いてみるね」
「ありがとう、伊織ちゃん!」
絢斗くんなら顔も広いし、希望の光も見えてくる。
ふと、にぎわう廊下を行き交う男の子に目が行った。
この中に、ハンカチを貸してくれた人がいるかもしれないんだよね。
もうすぐその人が見つかるかもしれない。
そう思ったら、ちょっとだけ胸がドキドキした。