隣の水道で手を洗っていた男の子が、ポケットから青いハンカチを取り出したのを見て、思い出す。
受験の日に借りたハンカチを。
忘れていたわけじゃないけど、やっぱり返す当てもなく。
まだあたしの机の引き出しに眠ったまま。
持ち主は、誰なんだろう。
学ランが唯一の手掛かり。
でも、それはかなり大きな手掛かりかもしれない。
ブレザーだったらどうしようもないけど、学ランは珍しいし。
この学校に入ってなくても、学ランの人を探せば、一緒に受験した人までたどり着けるかもしれないよね?
「伊織ちゃん、中学のときに男子の制服が学ランだった学校って知ってる?」
思い切って、伊織ちゃんに訊ねてみた。
「学ラン?なんで?」
「えっと……ちょっとね」