君が泣いたら、俺が守ってあげるから。



そうだ、俺も気になってたんだ。


脳裏から永井を消し、意識をそっちにもどす。



「だよな。そのままやってたら、絶対強豪校から推薦きたでしょ!」


「もったいないなあ」


「ほんっと意味わかんないっすよー」



ほめてるんだか、けなしてるんだか。


口々に出てくるそんな言葉に、蒼先輩はさらっと答える。



「他にやりたいことがあったんだよ」



他に……?


なんだよそれ。


こんなに好きなバスケをやめてやりたいことが中学時代にあったのか?


…………さっぱりわかんねぇ。



「じゃあこの春、そのやりたいことが終わったんですか?」



誰かが問いかけた正当なそれに、俺は蒼先輩の口元をジッと見つめる。



「……まあ…………だな……」



口調からは、決して達成感は感じられなかったが。


それっきり口を閉ざしスマホをいじり始めた蒼先輩に、突っ込む奴はいなかった。