この学校には、同じ中学から進学した子がいないのが救いだったけど、イコール友達がいないのはかわらなくて。
ひとりで過ごすことには慣れていたし、それを淋しいとも思わず出来つつある女子の輪を外から眺めていた。
そんなあたしに声をかけてくれたのが、伊織ちゃんだった。
『被服室の場所わかる?』
次の時間は、クラス写真を被服室で撮ると言われていて。
気づけば、教室にはほとんど人がいなかった。
『あ、わからない……』
迷路のような校内。
まだどこに何があるか全くわからなくて首を振りながらそう答えると、伊織ちゃんはニコッと笑って言った。
『あたしもなの。よかったら一緒に行かない?』
天使の様なその微笑みは、ポッカリと開いたあたしの心の穴に光を射してくれた。
すこし遅い春が訪れたように……。