うちの家族になったときは赤ちゃんだったマロも、今では立派な成犬。
でも、小さくてふわふわしてて可愛いのはあの頃のまんま。
マロをギュッと抱き締めてよぎるのは、お兄ちゃんのこと。
……マロは、一番お兄ちゃんに懐いていたから。
こんなとき、お兄ちゃんならなんて言ったかな……。
きっと、あたしの恋を応援してくれてたよね……?
「お姉ちゃん、美紗にはずっと笑顔でいて欲しいな……」
意味深な言葉を残して、お姉ちゃんは部屋を出て行った。
……なんだか、変だったな。
あたしはずっと笑顔でいるのに。
みんなが居てくれるから。
……蒼くんが居てくれるから。
この恋で、たとえあたしが傷ついたって構わない。
自らこの想いを手放す方が苦しいに決まってる。
お姉ちゃんの言葉の真意が分からないあたしは、このとき、本気でそう思っていた。