目に飛び込んできたのは青いハンカチ。
受験の日に、名前もわからない男の子が貸してくれたものだ。
男ものだし、なんとなく家の洗濯に出すのが躊躇われて、手洗いして自分の部屋で干して。
乾いたものを、そのまま机の引き出しにしまっておいたんだ。
忘れていたわけじゃない。
だからといって、返せるあてなんて全くなくて。
名前はおろか、顔だって涙で滲んでいた視界のせいでまったくわからない。
そもそも、桜園に入学してない可能性だって十分あり得る。
唯一の手がかりは、彼が来ていた制服。
この辺では珍しい学ランだった。
でも、私立だからいろいろな学区から来ているだろうし。
中学時代の制服を聞いて回るなんてこと、あたしには到底ムリ。
「返すのは無理かなぁ……」
ハンカチを眺めていると。
──コンコン。
部屋のドアがノックされ、あわてて引き出しを押し戻した。



