私の姿が見つからなくて、何かあったんじゃないかと心配してくれるひとがいる。

こんな私のことで、泣いてくれるひとがいる。

…こんなに、嬉しいことなんてない。


泣いている紗由の姿を目の当たりにして、じんと目の奥が熱くなった。



「椎先輩」


顔をあげた紗由は鼻をすすりながら涙を拭って、椎先輩に頭を下げる。


「麗を見つけてくれて、ありがとうございました…!」


その隣で私も頭を下げる。

椎先輩が見つけてくれなかったら、私はもっとひどい目に遭っていただろう。


すると椎先輩は「紗由ちゃんも探すの手伝ってくれてありがとう」と目を細める。


「麗ちゃんにこんなにやさしい友達がいてくれて安心した」


先輩が紡ぐ言葉はあったかい。

まるで包み込まれるようなそんな安心感がある。

それと同時に胸が締め付けられるような感覚がする。


ずっと感じているその感覚を私は見て見ぬふりをした。


名前をつけようと思えばきっとつけられるけど、今は付けたくない。


そんなことを思ってしまう私は、きっとずるい。