体育館に向かって先輩と歩いていると、体育館の方から誰かが猛スピードで走ってくるのが見えた。


「あれは…」

「誰でしょうね…?」


先輩と二人顔を見合わせていると、走ってきたその人物に抱きつかれた。その衝撃で2,3歩よろけた。


「え、え?」


誰か分からず、いきなり抱きつかれたことにただ驚いていると、その人物は顔をあげた。


「良かったぁ、麗!」


抱きついてきた人物___紗由は、涙に濡れて鼻水をたらして、それはひどい顔をしていた。

ぼろぼろ涙を零して「良かったぁ」と鼻をすすっている。


「え、え、紗由?ど、どうしたの?」


止まっていないその涙を拭いながら問いかけると、「心配したんだからぁ!」と怒鳴られた。


「いきなり椎先輩からあんたがどこにもいないって、見てないかって言われて…!」

「椎先輩から?」


先輩の方を見ると、先輩は気まずそうに説明した。


「麗ちゃんがいなくなって探してるときにたまたま出会って、会場が広すぎるから一緒に探してもらってたんだ」


「なるほど」と納得していると、紗由がまた涙声で「本当に良かったよぉ」と言う。


「あんたに何かあったんじゃないかって思ったら、わたし、わたし…!」