「気をつけて帰ってね」

「先輩も」


辺りが暗いせいで涙が流れたのがバレなくて良かった、って。


「ありがとうございました」


先輩にはきっと届いてないな。

私の言葉も、それに込められた意味も、私がお辞儀をしたことすらも。


それでいい。


先輩が見た最後の私の顔は笑顔であってほしいから。


先輩の背中が見えなくなるまで、その遠ざかる背中をずっと見つめていた。