そんなことを考えている間にいつの間にかスーパーが見えてきた。



…スーパーなんか見えなくて良かったのに。

ずっとずっと、先輩が隣で歩いてくれているこの空間が続けばいいのに。


そう願ってしまって、私は何を考えているんだと自分で驚いた。


なんでそんなこと思っちゃったんだろう。

こんな、図々しいことを私が願っていいわけがないのに。



「ほんとにここでいいの?」


スーパーの看板の前まで来た頃、先輩が言う。

私は「ここまで来たらもう大丈夫なんで」と頷いた。


「ありがとうございました、こんなところまで」


頭を下げると「気にしないで」と先輩は言った。


「俺が送りたくて送っただけだから」


辺りはすっかり陽が落ちて暗くなっている。

その上、看板の灯りを背にしている先輩の表情はあんまり見えなかった。

だけど、なんでだろう。

先輩が微笑んでくれているような気がした。


「今日は手伝ってくれてありがとう」


「ほんと、麗ちゃんがいてくれてよかったよ」なんて先輩は言う。


…先輩は分かってない。

きっと、分かってなんかいない。

いつも「お前なんかが」って言われてどこにも居場所のない私にとって、「いてくれてよかったよ」なんて言葉をかけられることの意味が。

それがただのお世辞だとしても、社交辞令だとしても、特になんの意味も込められていないとしても。


その言葉一つで胸が震えるくらいに嬉しいこと。


涙が出そうなくらい、嬉しいこと。


ああもう、陽が落ちて辺りが暗くなってしまって良かったって思っちゃうじゃん。