雪が降ると思い出す声がある。


「しーくん、見て!ゆき!」


ひらり、ひらり。

空から舞い下りるそれを見つけて楽しそうにはしゃぐ。

きらめく瞳も楽しそうな笑顔も無邪気で、雪と戯れるようにくるくる回る天使。


清水麗。


俺が彼女と出会ったのは物心のつく前だ。


家が隣同士で年も近いことから親同士も仲が良かった。

気が付いたら傍にいる存在。1つ年下の妹。そんな感覚だった。

俺達はいつも一緒に遊んでいた。

夏の暑い日も、冬の寒い日も。



麗はずっと笑ってた。


人懐っこいその笑顔は周りの人を惹きつけて、麗がいるだけでみんなが笑顔になれた。


その笑顔が曇り始めたのは、麗が7歳になるころ、俺が8歳になるころだ。


「麗ちゃんのお母さんね、病気になっちゃったって。だから病院にいるんだって」


自分の母親にそう言われた。

お見舞いに行くと、いつもは優しく出迎えてくれた麗のお母さんが病院のベッドで横になっている。

何かよく分からない機械に繋がれている麗のお母さんの姿を見て、子どもながらすごく衝撃を受けた。

その機械の横で母親を見つめる麗を見つけて、思わず「麗」と俺はその名を呟いてしまった。


「しーくん、しーママ」