怖かった。
 シンちゃんに別れを切り出すことが、ただ、怖かった。

 何となくから始まったシンちゃんとの5年間。
 そこにきちんとピリオドを打つことが出来なくて、私は、逃げるという一番狡くて、卑怯な手段をとった。

 飼い犬を置き去りにしたかのような胸の痛みに何度も襲われた。
 罪の意識に耐え切れなくて、私はシンちゃんを悪者にした。

『シンちゃんがどうしようもない人だから、もうやっていけなくなりました。
 パチンコとゲームばかりの毎日。
 家事はしない。お金は使うのに仕事は続かない。
 こんな生活はもう無理です。
 この5年、シンちゃんが変わってくれることを期待していたけど、シンちゃんは何も変わらなかった。
 だからもうやっていけません。』