「こちらです」

 と、案内された場所は桐生さんが空間のデザインを手掛けているらしい、花屋だった。

 花屋というよりは、感想に困るような謎だらけのオブジェが並ぶ空間で、世界各国から仕入れて来たアンティーク雑貨やアクセサリーが多数展示されている。

 花はあるにはあった。
 けれど、流木と一緒にドライの紫陽花をアレンジしたオブジェ、ドライユーカリに蜘蛛の巣を模したスワッグといった、退廃的なアート作品ばかりで、生きた花はどこにもない。

「ここ、お花屋さんなんですか?」

「生花の販売っていうより、パーティー会場とかブライダルの仕事がメインみたいです。僕も詳しいことはわかりませんが、フラワーアーティストの先生が手掛ける自己満オフィスらしいですよ」

 花屋なのに生きた花はない。

 さっぱり意味不明だったが、自分の知らない世界はアパートから車で30分圏内の場所にあった。

 そのフラワーアーティストの先生から、お店に並べる奇抜で斬新でワンアンドオンリーなアクセサリーが欲しい、と桐生さんに話を持ちかけられたらしい。