近藤さんは車内で何も聞いて来なかった。


あたしが泣いていたことは気が付いていたかもしれないが、遠慮してくれているようだった。


屋敷に戻ってきた途端、ユキエさんが怖い顔で仁王立ちをして出迎えてくれた。


「ユキエさん、どうしたの?」


「さっき有馬様から連絡が入りました」


その言葉にあたしはユキエさんから視線を逸らせた。


あたしのしてしまった事を、ユキエさんはすでに知っているのだろう。


「どうしてホテルになんて行ったんですか」


その質問に体がカッと熱くなるのがわかった。


武人君との、夢のような時間が一瞬にして脳裏によみがえって来る。


「……好きだと思ったから」


そう言うとユキエさんは大きなため息を吐き出した。


「そんな感情があるなんて思いませんでした。有馬様からは交際をやめたいとの連絡でした」