周囲を見回してみても、いつも通りの光景が見えるだけだった。


あたしは大きく深呼吸をした。


手にはジットリと汗をかいている。


本当に、あたしってばどうしたんだろう。


そう思い眼鏡をかけた瞬間、再びクラスメートたちの声がなだれ込んできたのだ。


慌てて眼鏡を外す。


もしかして、これが原因……!?


あたしは唖然として眼鏡を見つめた。


小さなお店でもらった高価な眼鏡。


あたしは自分の背中に汗が流れて行くのを感じた。


うそだ。


そんなこと、あるはずない。


眼鏡で人の心を聞く事ができるなんて……。


「里菜、眼鏡かけなきゃ授業の時見えないでしょ」


美穂がそう声をかけてきた。


「そ、そうだね」


あたしはそう返事をして、眼鏡をかけたのだった。