あたしを見た瞬間、カナタ先輩が声をあげた。


と、同時に右手首を掴まれる。


この前のように逃げられると思ったのかもしれない。


少し痛いくらいに掴まれて、その必死さを感じた。


「あ、あのさ、俺のこと覚えてる?」


そう聞かれてあたしは返事に困ってしまった。


ナナはいくらでもナンパされる。


その中の1人の顔を覚えていることなんて、きっとないだろう。


「忘れてるよな、ごめん」


そう言って苦笑いを浮かべるカナタ先輩。