8月上旬。


夜になっても昼間の熱さが残っていて、アスファルトから蒸し熱い熱気が立ち上っていた。


空には丸い月が浮かんでいて、周囲は明るい。


コンビニの袋を下げた17、8歳くらいの少女が鼻歌を歌いながら歩道を歩いていた。


自分の家まで後少し。


少女の足取りは軽い。


夏休み中ということもあって、周りの家はまだまばらに電気が付いている。


みんな長い休みを満喫しているようだ。


ふと、少女の鼻歌が止まり、何かを確認するように周囲を見回した。


辺りには見慣れた風景が広がるばかり。


少女はまた鼻歌を歌い始める。


しかし、それもすぐに止まった。


「椿のように散って死ね」


どこからかそんな声が聞こえてきた気がして、少女は立ち止まる。


途端に気味の悪さが体中を賭けめぐり、走り出そうとコンビニの袋を握り直した。


……だが、遅かった。