「……あの子、誰かに似てる気がする」




去り際に眼鏡をかけた男の人の呟きが聞こえた。




誰かに似てるって、私が?





気になったけど、今の私の状況では聞きに戻れる訳がない。




私はそのまま小鳥遊君と一緒に現場から離れ、壁に寄りかかりながら吐き気を押さえ込んでいた。





ふと、顔を上げると黄色い規制線のところに出来た人だかりの中に、フードを目深くかぶった人と目があった。





その人は両目が紅い男の人だった。





この男の人って、夢に出てきた人と一緒だ……。




そう思いながら瞬きすると、その人は一瞬にしていなくなっていた。





気のせい……だったのかな……?




──これが私と彼の運命の……最悪な出会いだった。




そして、これが悲劇の幕開けでもあった。