この時の私は無知だった。 何も知らずに考えずに、ただ疑問に思うだけだった。 でも、知らないことは残酷だ。 いや、私の存在自体がそうさせているのかもしれない。 自分の生い立ちも過去も私は知らない。 知っていれば、彼の抱える苦しみも悲しみにも気付けた。 無知なことは残酷だ……。 でも、それ以上に残酷なのは私の存在なのかもしれない──。