「紅緒、それを凌君の前で言える?」
「……言えるわけないでしょ。寿永隊長はもういないんだから……」
「本当に凌君が死んだと思ってるの?」
自分でもビックリするくらい低い声に、紅緒はビクリと肩を揺らす。
凌君の遺体は見つかっていない。
だから、生きている可能性がある。
それなのに、彼の補佐官である紅緒が彼が生きていることを信じなくてどうする?
「だったら、何で寿永隊長は私の隣にいないの!?生きてるなら何で帰ってこないの!?」
紅緒は両目いっぱいに涙を溜めて、僕を睨んできた。
妹の言葉に僕は何も言えなかった。
僕が生きていると綺麗事を言っても、紅緒言っていることが正しい。
彼が生きていて、此処に帰ってこない理由がない。
帰ってこないこと……つまり、彼は生きてない。
死んでしまったとしか考えられない……。
「ほら……何も言えない……」
紅緒は涙を拭うと、ソファーに体を預けて呆然と天井を見上げていた。