そんなことを心の中で突っ込んでいると、後ろで何かが倒れる音がした。





振り向いてみると、紅斗が自分のデスクの椅子を蹴り飛ばしていた。





「何で琉介が……。琉介が僕を裏切るなんてそんなこと……」





紅斗は琉ちゃんを信用していた。





お互いに協力して私を守ってくれようとしていた。





でも、その守ろうとしていた理由は安倍明晴が姿を偽ってまで私の傍にいた理由と同じだと思う。





全ては切碕復活の為だったんだと思う。





「紅斗、現実を受け止めろ。アイツはお前を裏切って、香西京を殺した。それは紛れもない事実だ」





真実を受け入れられない紅斗に、寿永隊長は追い討ちをかけるようにそう言った。





紅斗もその言葉に悔しそうに歯を食い縛り、うつむいた。





「……それに、多分アイツが菖を安倍明晴に突き出したんだろうな。俺は菖にアイツを探らせてたからな」





そうだ……、小鳥遊さんは琉ちゃんの近辺を探っていたんだ。






小鳥遊さんは紅斗と琉ちゃんを味方だとデータに残している。





それはもしかしたらまだ全てを知っていなかったからかもしれない。





その偽りのことを知った時点で、これ以上深く探られれば自分が安倍明晴と癒着していることが明らかになってしまう。





そうなれば、面倒なことになると踏んだのだろう。





面倒なことになる前に何らかの理由を使って安倍明晴に小鳥遊さんを捕らえさせ、拷問し、死に追いやった。





──そう推測すれば、全てに合点が行く気がする。