「なんでそんなこと聞いたの?」


「それは……」


わざと視線を外して泳がせる。


「誰かから何か聞いた?」


カナは真剣な表情を浮かべている。


不安になっているのがわかる。


「いや、別に……」


「本当の事を教えて」


そこまで必死に食いついてくるということは、カナは普段から龍へ不安を抱いていたのかもしれない。


例えば、浮気の不安とか。


「龍に似た人が女の子と歩いてたって、噂で聞いただけ。でもたぶん勘違いだよ。ごめんね変な事聞いて」


あたしは早口でそう言うと、苦笑いを浮かべて教室へと戻ったのだった。