「…帰ろうか、今日はありがとう」 何事もなかったみたいに、立ち上がるから。 「ううん、楽しかった」 私も何もなかったみたいにそれに続いた。 少し前を歩く秋樹の背中に。 手を伸ばそうとして、声をかけようとして。 でも勇気が出なくて、手を引っ込めて、言葉を飲み込んで。 ねえ、秋樹。 あの時私に、キスしようとしましたか?