「…なんで、言ってくれなかったんだろう」




自分の教え子の進路なんだから、先生が知っているのは当たり前だ。

でも、高嶺たちも知ってたから、って先生が言った。

高嶺も、コウも、柊香も、きっと知ってるんだ。

知らないのは私だけなんだ。




……私、秋樹とは1番仲のいい女の子だって、思ってたのになぁ。


みんながアッキーって呼ぶ彼のことを私だけが秋樹って呼んで。

みんなが有沢って呼ぶ私のことを男子で唯一、彼だけが芹奈って呼んで。


それは私の中では何よりも大切で、重要で、心の1番真ん中にある特別なことだったのに。



だけどきっと秋樹からしたらたかが名前の呼び方。




私を写真撮るのに誘ったことも。


ふたりきりになった時の距離感も。



…キスしなかった、あの日も。





何も特別なことはなくて、東京に行くことも教えてくれないような、そんな程度の人間だったのかなぁ。