さすがに花を100本購入する余裕はなかった。


帰りの電車賃を考えると、野花を積むくらいしたあたしたちにはできない。


あたしたちは図書館の女性に事情を説明し、丘の上までやってきていた。


ここには沢山の花が咲くのだそうだ。


時期的にまだ少し早いかもしれないと言われていたけれど、そこには白い花が沢山咲き誇っていた。


丘一面の白い花に思わずため息が出る。


「綺麗」


沙良も立ち止まり、そう呟いた。


一瞬呪いの動画のことなんて忘れてしまいそうになる。


「コスモスだね。だけど白色ばかりを見るなんて初めてかも」


あたしはそう言い、背の高くなったコスモスを一本千切った。


風が吹くと丘全体のコスモスが揺れて、とても幻想的に見える。


「なんか、摘むのがもったいねぇな」


寛太が珍しく乙女みたいなことを言っている。