スマホと財布を小さな鞄に入れ替えて、あたしはそっと部屋を出た。


足音を忍ばせて階段を下りて行く。


家の中はまだ真っ暗で、外から聞こえて来る音もほとんどない。


どれだけ静かに動いていても、自分の足音が大きく聞こえて来るようだった。


どうにか玄関まで到着してあたしは、ゆっくりと鍵を開けた。


カチャッと言う音にヒヤリとする。


玄関を抜け出すと、ようやく体の力が抜けた。


鍵を閉めて足早に駅へと向かう。


街はまだ眠っていて、人の気配がない。


静かな街を歩いていると途端に女の歌声を思い出し、歩調が速くなっていく。


砂嵐の動画に黒い人影、そして迫りくるカウントダウン。


そこに加わった新しい情報の歌声。


あれに気が付いている人は何人いるだろうか?