抱きしめられた感覚と、裕治くんの体温がまだ微かに残っている。
動揺を隠しきれない上に、すごく切なくなる。
裕治くんに……抱きしめられた。
夢みたいな話だけど、ついさっきその時間は――お互い共有している時間。
一体裕治くんはどんな気持ちで、私を抱きしめたんだろう。
一人の友達として?一人の女として?
どっちにしたって裕治くんの気持ちが分からない。
舞い上がる気持ちはどこにもなくて、ドキドキする感情よりも、キュッと胸が苦しいようなそんな感じ。
もしかして……私のこと好きなのかな。
その浮かんだ考えに、強く首を横に降る。
本当の気持ちを聞いていないこの状況で、勝手に妄想を膨らませるのはよくない。
でも心は素直で、勝手に裕治くんは私が好きなんだと結びつけて期待を膨らませていく。
それを引き裂こうと、否定する自分もいる。
甘い甘いとろけるようなそんな優しい気持ちの中にある、濃い苦味がじわりと滲む。
まるで、カラメルプリンのようなそんな感じ。
モヤモヤした感情を乗せたまま、電車は走る。
そっとブローチを撫でて、じゅくじゅくしている心の傷が痛いと叫んでいる心を落ち着かせることしかできなかった。