「彼方! 鬼龍院くんも!」

「柚月、たい焼きたくさん買ったんだけど食べる?」

「いいの?」

「……月城さんも、いる?」


たい焼きの入った袋をセレナちゃんに向ける。

セレナちゃんは「ふんっ、まあ貰ってあげてもいいわよ」といつもより冷たい声でたい焼きを一つ手に取った。


「こらこら月城クン。ここは素直に『ありがとう、嬉しいわ!』と言うところだろう?」

「うるさいわね鬼龍院司! 柚月さんも食べるからわたしも食べようと思っただけで、別に欲しくてもらったわけじゃ……」


一口、セレナちゃんはたい焼きを頬張る。

「あら美味しいわね」と言うセレナちゃんの言葉どおり、カスタードクリームの入ったそのタイ焼きは、とても甘くて美味しかった。


タイ焼きを食べ一息ついたところで、セレナちゃんが少し不機嫌そうに口を開く。


「で、柚月さん。わたしはこれっぽっちも一色彼方のことは好きではないし、この一色彼方こそ邪魔者だったのよ」

「おや、なんだか興味深い話の途中だったようだね。というかそうか、やはり君が好きなのは一色クンの方ではなかったか……まあ、薄々そんな感じはしていたが」


どこか納得したようにそう言ったのは鬼龍院くんだ。

う、嘘……セレナちゃんは本当に、彼方のこと好きってわけじゃないの……?