紙皿を持って行こうとした私の腕を、突然つかむ彼方。

どうしたんだろうと思っている間に、ちゅっと、私のおでこにキスをした。


「なっ!?」

「行ってきます」


爽やかな笑顔を残して、彼方は喫茶店の表へと戻っていったのだった……。



その後、必死に顔の熱をさまし、調理室に戻った私。

するとちょうど交代の時間だったらしく、次の班の子たちがエプロン姿で待機していた。


「あ、近衛さん帰って来た! もう交代の時間だから、私たちもいったん上がるね」


そう言ったのは同じ班の女の子で、他の同じ班の子も、自分たちの分の片付けをした後にエプロンを脱いでいた。


「近衛さん、後は私たちに任せてね!」

「なんか面白い企画やってるとこも多いし、見て回るだけでも凄く楽しかったよ!」


先に文化祭を見てきたクラスメイトのそんな言葉に、私もワクワクと胸が高鳴った。


そこでふと、誰と文化祭をまわろうかと考える。


ちなみに私は知っている。

私の班のほぼ全員が、恋人と文化祭をまわる約束をしていることに……。


だからその子たちに声をかけるわけにもいかないし、でも彼方はまだ表で、交代の時間まで結構あるはずだから……ここは、一人で行くしかないか。


「追加の紙皿はここに置いておくね! じゃあ、行ってきます!」

「いってらっしゃ~い!」


次の班の子たちに見送られ、私はとりあえず一人で文化祭をまわることにしたのだった。