どうしよう。どうしよう。

どうすれば彼方が顔を上げてくれる?

どうすれば彼方が私を見てくれる?


「か、彼方、彼方、私ならほら、大丈夫だから! ね! ほら顔を上げ……て……」


なんでそんな、泣きそうな顔をしているの?


「どうしたの? 辛いことがあったなら、私に」

「ごめん」

「彼方?」

「ごめん、本当に……ごめんね、柚月……こんな、俺……最低だ」

「なんで彼方が謝るの! なんで」

「……こんな頼りない俺で……本当に、ごめん」


謝らないでよ。

むしろ謝らなきゃいけないのは、私の方なんだから。


「さあ、無駄話はそこまでにしてもらおう。外もだいぶ暗くなってきたことだ。今日のところはもう帰るとしようじゃないか」


鬼龍院くんの言葉で、外が本当に暗くなっていることに気付く。

早く帰らないと、お母さん心配してるよね。


「外に車を手配している。近衛クン、一色クン、よかったら送っていこう……いや送らせてくれ。暗い道を歩くのは危険だからね」


こうしてその日、私と彼方は鬼龍院くんに送られ、家へと帰ったのだった……。