「ねぇ、柚月」

「なに?」

「……あー、えっと」

「彼方どうかしたの?」

「…………うん、ちょっと待って」


苛立たしげに、彼方は私の隣にいる彼に目を向けた。


「……邪魔だから、どっか行ってくれる?」


とても冷ややかな声だった。

だがその言葉をかけられた彼はなにも動じることはなく、けろりとした顔で「断る!」とハッキリ言った。


彼、鬼龍院くんとこうして一緒に帰るのはもう何度目になるだろうか。


彼方といつも通り二人で帰ろうとしたところ、鬼龍院くんが「僕も一緒に帰っても良いかね?」と声をかけてきて、今はこうして三人で、人気のない廊下を歩いていた。


「僕は近衛クンと共に帰りたい。一色クン、君こそどこかに行ったらどうかね?」

「……俺は、柚月の家と隣同士だから。反対方向のあんたこそ、どっか行くべきだと思うけど」


あ、あー……彼方がこれでもかってくらいに怒った顔してる……。


「え、えっと! それで彼方、私になにか話すことがあったんじゃないの?」


無理に話題をそらすのも、これで数回目だ。