「そういえばね、日曜日、涼太が女の子と歩いてるの見かけて……ちょっとびっくりした。涼太と恋愛が、なんとなく私の中で繋がらなくて。涼太だって、普通の男なのにね」
慌てて拾い上げた話題は、さっきまで佐藤さんと話していたものだった。
宮地が顔だけでこちらを振り向いたのが視界の隅で分かったけど、黒のパンプスのつまさきで、足元の砂をいじりながら続ける。
「涼太が誰と付き合っても、もちろん自由だし私がなにか言うつもりもないんだけど……親心っていうか。ずっと見てきただけに、なんとなく複雑で」
両手でそれぞれ握っているブランコの鎖を、指先でいじる。
錆びているのか、ざらざらとしていた。
「ちゃんと、涼太を大事にしてくれるような子だといいなって。口は悪いけどいいヤツだから、傷つけるようなことしてほしくない」
こんな心配、菜穂だってしていないだろうに……と思うと、ふっと苦笑いが浮かぶ。
お人よしのつもりもないけれど、たった一歳半しか離れていない涼太のことが、大丈夫か気になって仕方ない。
横柄な態度のせいで誤解されやすいタイプだから余計に。
涼太に知られたら絶対にうっとうしがられそうだな、と自嘲して笑みをこぼすと、それまで黙っていた宮地がポツリと言う。
「唐沢のそれってさ、本当にただの親心?」
「……え?」
突然の問いに顔を上げると、宮地がじっと私を見ていて……その探るような眼差しに声が出なくなってしまう。
そんな私をじっと見てから、宮地は「あー、いや、まぁいいや」と疑問を取り下げる。
そして、一度立ち上がると、私と向かい合うように柵に座り直した。
同じ高さの目線に、心臓が騒がしく鳴る。
「このあいだ、唐沢、失恋したとか言ってたろ」
真面目な顔で聞かれ……ああ、松田さんにチョコケーキもらったときに話したっけと思い出す。
たしか、あまり続けたくなかったから私が強制終了させた話題だ。



