「紹介しないけどね。その子、自分に興味ある男の人が苦手だから、鶴野今の時点でもうアウトだし」
「会ってもないのに……!」

頭を抱えて「マジか……」と独り言みたいに呟いた鶴野を笑っていると、隣に座る宮地が「そいつとは今も会うの?」と聞いてくる。

隣を見るとすぐに目が合い「向井弟と」と言われるから「あー、うん」と答えた。

「週に一度は会うかなぁ。姉の方合わせて三人でご飯食べたりとか、最寄りの駅が一緒だから帰りに一緒になったり。
でも、涼太と並んで歩いてるとすれ違う女の子に見比べられて〝彼女……?〟〝いや、まさか〟みたいな顔されるから結構面倒くさいけどね」

明るく笑いながら、運ばれてきた料理を小皿にとる。

鶴野が勝手にオーダーしたメニューは、揚げ出し豆腐に焼き鳥、トマトサラダに、エビチリ、チーズの盛り合わせと好き放題だった。

「涼太って口がすごく悪くて、ひとのことよく〝チビ〟とか言うんだけど、噂を聞く限りだとただ美形ってだけしか言われてないから、ちょっと安心した。
周りのひとには毒吐いてないんだなって。内弁慶なのかな」

ふふっと笑いながら、小皿にとったエビチリを口に運ぶ。
ピリッとした独特の辛みが舌に乗り、そのあと海老の甘さが広がる。大ぶりの海老がおいしい。

「なんか、幸せそうな顔して話すんだな。そんなにそいつが大事?」
「え?」

隣を見ると、宮地は頬杖をつきながらじっと私を見ていた。
まるで観察するような、私の表情なにひとつ見逃さないような眼差しに心臓が跳ねる。

周りの部屋から聞こえてくるざわざわとした話し声のなか、わずかな沈黙を挟んだあとで宮地が言う。