私と宮地の配属されている支店は、規模も建物自体も割と大きい。

オフィス街の真ん中という立地条件もあり、顧客は半分が企業や個人事業主だ。
エリア内には小学校が三校と、中学高校が一校ずつあるから、オフィス街から少し離れると住宅街も多い。

そういった背景から顧客数は他の支店よりも多いため、配属される行員も多く、そして支店の広さもあるというわけだ。

一昨年改築されたばかりの新しい支店は三階建てで、一階が預金フロア。二階が融資営業フロア、そして三階が食堂や更衣室、書庫などという造りになっている。

更衣室も三階だから、出勤してまず三階まで階段を上がらないといけない……というのは、慣れるまでに少し時間がかかったし、今でも面倒なときが多々ある。

そんな支店で宮地は営業、そして私は窓口を担当している。

フロアでいえば、私は一階、宮地は二階にデスクがある。
もっとも宮地の場合、営業だからデスクにいることよりも外に出て顧客訪問している時間の方が長いけれど。

「ATMで読み取れないって出るんですけど……」

十五時五分前。
そろそろシャッターを閉める……というところで来店されたお客様が、カルトンの上に通帳を置いた。

「おそらく、磁気がとんでしまったのかと思われます。再設定し直しますのでおかけになってお待ちください」

通帳の後ろにある磁気が機械で読み取れなくなることはよくある。
一日にひとりやふたり、必ずその用件で来店されるくらいに。

大抵のお客様は、少し不機嫌になりながらも〝仕方ない〟と我慢してくださるのだけど……今回のお客様は違った。

五十代半ばだと思われる女性が、窓口の前に立ったまま私に向かって声を荒げる。