最初は、あまりいい印象を持たなかった。

配属された支店が一緒だったけれど、宮地の恋愛観は新人研修のあと開かれた飲み会で知っていたから。

『なぁ、唐沢、知ってるか? こいつ、女に夢中になったことないんだって。女との付き合いは仕事の息抜き程度でいいだろ、とか言ってるんだけど……え、なにこいつ! 
今、唐沢に説明してて改めてびっくりした! なんだこいつ!』

そう、鶴野が納得いかないみたいな顔をして話してきたのは、新人研修三日目のあとの飲み会の席でだった。

二週間の新人研修を本部で済ませたあと、各々配属された支店で仕事につくことになる。

その日は初めての同期会で、親睦を深めようと鶴野が言いだしたのが始まりだった。

二十人近くが集まっての飲み会は、居酒屋の大広間で行われていた。

鶴野に告げ口された宮地は、『おまえ、バラすなよなぁ……』とバツが悪そうな微笑みを浮かべていた。

『バラすだろ。そうじゃなきゃ宮地、同期の中でも女の子全部持ってきそうだし』
『職場でそんなことするわけないだろ。軽く付き合いたいのに、仕事上でも付き合いあるんじゃ面倒くさいし。同じサークルとか同じ職場とか、まずありえない』

ビールをぐいっと煽る宮地に、鶴野が『でもさ』と聞く。

『宮地はそうだとしても、相手からくる可能性だってあるだろ? まぁ、言いたくはないけど、外見いいし』

『あれ。なに、鶴野、俺のことそんな風に思ってんの?』と片眉を上げからかうように笑う宮地は、鶴野に『そういうの女相手にやれよ』とツッコまれたあと、笑顔のまま答えた。

『相手からきたら逃げて消えるかな。俺、追いかけられんのとか嫌いだから』

ジョッキを傾けながらの答えに〝軽い恋愛観だなぁ〟と呆れにも近い感心をして、自分とは違うタイプだと思った。